村上春樹 短編集 『午後の最後の芝生』

夏を感じさせる作品ですが、

夏が終わり秋に読んでも哀愁を感じられます。

 

物語は、主人公の「僕」の夏休みのバイトの話です。

「記憶というのは小説に似ている、あるいは小説というのは記憶に似ている」

同い年の女の子と付き合っていたが

ある日に突然、相手に新しいボーイフレンドができたとのことだった。

缶ビールをのみ、タバコを吸いバイトに出勤すると

別れてから周りからは「最近ずいぶん明るくなったね」と言われるようになった。

 

芝刈りのバイトで稼いだお金の使い道がないことに気づき

バイトをやめることを決意した。

同い年の女の子と別れたからだ。

 

だが僕の丁寧な仕事ぶりに社長はやめることに残念がっていたが

梅雨時期もありあと1週間だけバイトを続けることになった。

 

三日晴れが続き一日雨が降り、三日晴れが続きと繰り返し

一週間が過ぎ、最後の日が来た。

 

相変わらず丁寧に芝刈りに依頼人は、

「死んだ亭主が芝刈りにはうるさくてね。あんたの刈り方に似てるよ」

依頼人は感心しサンドウィッチをご馳走になりながら家の中を案内された。

 

案内されたのはさっぱりとした女の子の部屋でした

ただ

机の上に指を走らせてみると、指にはほこりで白くなった。

一か月分のほこりだ。カレンダーも六月のものだった。

 

僕は一か月も使われていない女の子の部屋で

どんな女の子か当てるように言われます。

僕は別れた女の子の顔が浮かびながら質問に答える。

 

そこには死の匂いが漂っている

同い年の女の子は生きているのだろうか

 

「あなたは私にいろんなものを求めているでしょうけど

私は自分が何かを求められているとはどうしても思えないのです」

 

僕の求めているのはきちんと芝生を刈ることでだけなんだ。

 

「あなたのことは今でもとても好きです」

「優しくてとても立派な人だと思っています。

でもある時、それだけじゃ足りないんじゃないかという気がしたんです。

どうしてそんな風に思ったのかは私にもわかりません。

十九というのは、とても嫌な年齢です。

あと何年かたったらもっとうまく説明できるかもしれない。

でも何年かたったあとでは、たぶん説明する必要もなくなってしまうんでしょうね。」