村上春樹 四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて

四月のある晴れた朝、原宿裏通りで僕は100パーセントの女の子とすれ違う。

 

100パーセントの女の子とすれ違うそんなことがあるのだろうか

 

もし100パーセントの女の子と出会ってもなんて話しかければいいのだろう

 

「あなたは私の100パーセントの女の子です」 こう話しかけてみても

「ごめんなさい あなたは私の100パーセントの男じゃないのよ」

 

そういわれることも十分考えられる

僕はそのショックから二度と立ち直れないかもしれない

 

結局のところ年をとるというのはそうゆうことなのだ。

 

もちろん今では、その時彼女に向かってなんて話しかけるべきであったのか、

僕にはちゃんとわかっている

 

その科白は「昔々で始まり」、「悲しい話だと思いませんかで終わる。」

 

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少年は18歳で、少女は16歳だった。

二人はいつか100パーセントの少年と少女がいるに違いないと固く信じている。

奇跡はちゃんと起こったのだ。

 

君は100パーセントの少年と少女だとお互いが確信する。

 

しかし二人にはほんのわずかな、、、ほんのわずかな疑念が横切る

 

ねえ、もう一度だけ試してみよう僕らが本当に100パーセントの恋人同士なら

いつか必ずどこかでまためぐり会えるに違いない。

 

ええ、わかったわ

そこで再び二人は別れる

75パーセント・85パーセントの恋愛を繰り返しながら、、、

 

少年は三十二歳・少女は三十歳 

時は驚くべき速度で過ぎ去っていった

 

あの時の僕らは間違いなく100パーセントの男の子と女の子だった

 

いまは十四年前ほど澄んではいない。

二人はそのまま言葉もなくすれ違い、そのまま人混みの中へと消えてしまう。

 

永遠に。悲しい話だと思いませんか。

 

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三十二歳の僕はそんな風に会話を切り出してみるべきだった。